Center for Landscape Researhch, Kyushu Sangyo University

活動記録

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■ 2019年12月24日(火)18時00分〜19時30分 第3回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019 <後期>
「こころに触れるまち」
                            早稲田大学大学院創造理工学研究科 教授 佐々木葉先生
テーマ:“エコデモ”をさらに考える「まちが人の心に触れるようにデザインする」をめぐって
    「こころに触れるまち」
講師: 早稲田大学大学院創造理工学研究科 建設工学専攻 教授 佐々木葉先生
参加者数:25名

 後期のレクチャーシリーズの最終回として、“エコデモ”をさらに理解するため、『「まちが人のこころに触れるようにデザインする」をめぐって「こころに触れるまち」』と題し、お話いただきました。

 まずは、「こころに触れる、とは?」という問いかけを皮切りに、ランドルフ・T・へスター氏著の『エコロジカル・デモクラシー:まちづくりと生態的多様性をつなぐデザイン』の中の「まちが人々の心にふれるようにしなさい」の一節を紹介しながら、エコデモの本質に迫るお話が展開されました。そのうえで「体験した風景がこころに触れるとして考えてみよう」という佐々木先生の視点が示されました。

 レクチャーの中では、テーマに関連して、長野県宮田村、新潟市福島潟、北鎌倉の事例をご紹介頂きました。宮田宿では、まちの人々に深く入った山の風景や、建築群のなかでの喜多屋東蔵の重要性について掘り下げられました。また、新潟市福島潟の人と生き物のどちらも大切にするデザインについてや、北鎌倉での日常の風景について、お話頂きました。

 このレクチャーでは、個人的な風景体験とその公共性と共有性に話がおよび、風景を媒体とした場としてのまちのあり方を考える機会となりました。

                                               文責:松野尾仁美

 2019年11月05日(火)18時00分〜19時30分 第2回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019 <後期>
「エコデモのクリチバ」
                                          龍谷大学 政策学部 教授 服部圭郎
テーマ:「エコデモとあまみず社会」
講師: 服部圭郎(龍谷大学政策学部・教授)
参加者数:17名

 今回は、龍谷大学の服部先生に、エコロジカル・デモクラシーの基本的な概念等と、ブラジル・クリチバ市(以下、クリチバ市という。)におけるエコロジカル・デモクラシー的な取り組み事例について、解説をしていただいた。

 まず、初めに、エコロジカル・デモクラシーを提唱したランディ・へスター氏の紹介が行われた。ランディ・へスター氏は、市民参加型のランドスケープ・アーキテクトとして有名であるが、社会学者でもあり、そのことがエコロジカル・デモクラシー提唱に影響しているとのことであった。

 エコロジカル・デモクラシーとは、デモクラシー(民主主義)と、エコロジー(環境)との密接なる相互依存的な関係性が基礎とした社会概念であると解説された。
 また、エコロジカル・デモクラシーによるデザインでは、「聖性(Sacredness)」、「連携性(Connectedness)」、「公平性(Fairness)」が求められることが示された。特に、「聖性(Sacredness)」という概念が特徴的であり、ランディ・へスター氏は、市民が聖なる場所や大切にしている場所を重視したデザインを行っていたそうである。

 続いて、クリチバ市におけるエコロジカル・デモクラシー的(以下、エコ・デモ的という。)な取り組み事例の紹介が行われた。まずは、「エコロジカル・デモクラシーのデザイン」でも紹介されている優れたバスシステムについてである。この政策自体はトップダウン的に実施されたもので、市民参加的な取り組みではないが、その特徴的な政策の展開方法により、市民の所得格差の縮減等のエコ・デモ的な効果が得られていることが紹介された。さらに、クリチバ市でのエコ・デモ的取り組みとして、「ごみ買いプログラム」「ごみではないごみ運動」「羊による公園管理」の3事例が紹介された。これらの詳細については、BIOCITY(ビオシティ)74号 (2018年04月07日発売)掲載の服部圭郎著「世界にみるエコロジカル・デモクラシーの潮流 ブラジル・クリチバ市の事例より」を参照されたい。

 このようなクリチバ市でのエコ・デモ的な取り組みを成功に導いたのは、当時の市長であるジャイメ・レルネル氏の貢献は当然のことであるが、当時、市長のブレーンであった日系一世の中村ひろし氏の存在も大きいとのことであった。この中村ひとし氏もランドスケープ・アーキテクトであるが、エコ・デモという考え方を知っていたわけではないそうだ。中村ひろし氏は、自分の信念に従って取り組んだ結果、エコ・デモ的なプロジェクトを遂行してしまったとのことであり、大変興味深く思われた。この中村ひとし氏の詳細については、服部圭郎著「ブラジルの環境都市をつくった日本人:中村ひとし物語」(未來社)を参照されたい。

                                           文責:日高圭一郎
 2019年10月18日(金)18時00分〜19時30分 第1回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019 <後期>
「エコデモとあまみず社会」
                           九州産業大学 景観研究センター長 建築都市工学部 教授 山下三平
テーマ:「エコデモとあまみず社会」
講師: 九州産業大学 景観研究センター長 建築都市工学部 教授 山下三平
参加者数:15名

 前期のレクチャーシリーズのテーマであった「エコデモ」への理解を更に深める意図で、後期のレクチャーシリーズは組み立てられており、その初回として「エコデモとあまみず社会」と題し、お話いただきました。

 冒頭、近年の都市型水害が多発する現状、人口減少社会においてのインフラ整備の持続可能性といった社会背景から、今までの人口ボーナス期と同じようなインフラ整備のあり方がよいのかの問いかけがあり、自然の機能をできるだけ生かしたインフラ整備、即ちグリーンインフラが求められてきている状況が報告されました。

 お話の中で、都市型水害を軽減する為には、流域全体で雨水の貯留と浸透の機能を改善する必要があり、市民の手による小規模で、分散型の、かつ多機能で、魅力的な水管理というこれからのインフラ整備のあり方が重要であることが理解できました。

 市民活動の事例として、樋井川流域のあめ庭憩いセンターや樋井川テラスなどが紹介され、人々の集う場が、エコデモの原則の「センター(Centeredness)」、「つながり(Connectedness)」、「境界/範囲(Boundary/ Limited Extent)」、「特別さ(Particular-ness)」に該当していることを、それぞれ、丁寧に解説いただきました。

 このレクチャーを聴講し、水循環を含めたインフラ整備を行政だけに委ねてしまうのではなく、自分たち、市民の手で作り上げていくことが、グリーインフラへの道筋であると感じました。

                                           文責:松野尾仁美
■2019年7月12日(金)18時00分-19時30分 第3回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019<前期>
「なぜ・いま・日本で、エコデモなのか」
                    エコロジカル・デモクラシー財団 代表理事
                    東京工業大学環境・社会理工学院建築系都市・環境学コース

                                       准教授 土肥真人
テーマ:「金沢・能登のエコデモ活動のいま」
講師:土肥 真人(エコロジカル・デモクラシー財団 代表理事/東京工業大学環境・社会理工学院建築系都市・環境学コース准教授) 
参加者数:30名

 「“エコロジーはデモクラシーの未来の支持者である”をめぐって」という総合テーマで開催してきたシリーズの最終回。エコデモの、我が国における今日的意義を再確認することができました。

 土肥さんのエコデモ・デザインは、1)自然と社会を一緒に考え実践し、2)スケールアップ・スケールダウンをデザインの課題とし、3)まちが人の心に触れるようにデザインする、という3点が要件ということです。土肥さんが例として示した、等々力渓谷の非エコデモ的整備は、「公共」の陥穽を鮮明に示していました。

 ところで、福岡市に水を送る8つのダムの、7/12の平均貯水率は24.39%で、平年の89.24%を大きく下回っています。しかしこのことの意味を感じている市民は、必ずしも多くないのではないでしょうか。

 蛇口の水、お風呂や炊事場の水、トイレの水が循環していることを、実感できる仕組み・『デザイン』が、不可欠と再認識しました。やはりいま・日本はエコデモを必要としています。

                                            文責:山下三平
■2019年6月14日(金)18時00分-19時30分 第2回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019<前期>
「金沢・能登のエコデモ活動のいま」
                           金沢大学人間社会学域地域創造学類 助教 丸谷 耕太
テーマ:「金沢・能登のエコデモ活動のいま」
講師:丸谷 耕太(金沢大学人間社会学域地域創造学類 助教) 

 石川県(特に金沢・能登)の自然と文化の相互関係について考える生物文化多様性の活動について、エコロジカル・デモクラシーの視点から分析する報告がなされた。
 エコロジカル・デモクラシーの15の要件について、金沢・能登の具体的事例の紹介からわかりやすく解説していただいた。主に、2017以降、実験的取り組みとして丸谷氏が行っているエコデモツアーで発見された内容に関する報告が行われた。そのひとつが、NPO法人輪島土蔵文化研究会の取り組みである。2007年の能登半島震災のさいに、復旧支援の対象外となった輪島塗の土蔵の解体が600件行われたが、町並みや産業特性の消滅を危惧した市民グループがNPO法人輪島土蔵文化研究会を立ち上げて、土蔵を修復し地域拠点として活用していった。この取り組みは、エコデモの視点からみるなら、土蔵の利用が興味と場所を分かち合う拠点であった(中心性)。オーナーにとっては守るに値する価値のある存在となった(聖性)。左官職人たちにとっては地元の職人の知恵の蓄積の場となったのである(特別さ)。
エコロジカル・デモクラシーの視点からまちづくり活動を見ていくことのおもしろさを感じることができる内容であった。
                                            文責:木村隆之
■2019年5月31日(金)18時00分-19時30分 第1回景観セミナー:レクチャーシリーズ2019<前期>
「子供と学ぶ生態系とデモクラシー」
                        福岡大学工学部社会デザイン工学科委 助教 伊豫岡 宏樹
 
テーマ:「子供と学ぶ生態系とデモクラシー」
講師:伊豫岡 宏樹(福岡大学工学部社会デザイン工学科委 助教)
参加者数:15名

 環境教育と応用生態工学の取り組みを、エコデモの視点を踏まえて、まとめてうかがう良い機会でした。

 ご自分の紹介、エコデモについての理解、子供たちとの交流、失敗例、そして環境教育とエコデモについてーー順序よくすすめられたお話は、とてもていねいに準備されていると思いました。

 人々の善意による身近な生き物の移入に対する、専門家としての関わりの難しさ、川掃除のもつ、相互作用的で責任ある関わりの意義、生物をゆっくりと観察し、知ることによる風景の変化など、とても印象的でした。

                                           文責:山下三平

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